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東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)136号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

二 審決摘示に係る本願発明と原出願発明の一致点及び相違点も当事者間に争いがないところ、原告は右相違点に対する審決の判断を争うので、以下にこの点について検討する。

1 相違点(1)に対する判断について

(一) 前記争いのない本願発明と原出願発明の一致点及び成立に争いがない甲第二号証の一ないし三(本願の補正に係る明細書及び図面)、第三号証の一(原出願の特開昭四九―四一一一三号公報)、同号証の二(同手続補正書)、同号証の三(同特公昭五五―二九二七号公報)によれば、両発明とも手動の感知装置により穀稈の長短の検出及び扱深調節装置の自動的作動を行うことにより、穀稈の扱き深さを調整することを目的とするもので、本願発明の明細書及び図面に記載された実施例と原出願発明の明細書及び図面(第1図、第2図)に記載された実施例は同であり、いずれも右感知装置により右目的に沿つた効果を奏するものであること、両発明の明細書はいずれも唯の右実施例に基づき発明の構成を説明しているところ、本願発明の明細書には、「検知体12は第1図に示したように水平部12´が突起11´に突き当つて実線の位置にあるが、穂先の押圧力により仮線の位置に自由に回動し、…」(七頁七行ないし一〇行)と記載され、原出願発明の明細書には、「前記感知装置10は該装置10に穀稈の押圧力が加わると、その押圧力に応じて回動変位し……」(甲第三号証の三の二欄三〇行ないし三一行)と記載されていることが認められる。そして、右各記載と各添附図面(甲第二、第三号証の各三)により両発明の感知装置の動作をみると、いずれも同装置は、軸(本願発明では13と表示しているが、原出願発明では表示記号がない。)に固定され、その作用部分である検知体(本願発明では全体を12、穂先に接する垂直部を12´´、穂先に接しない水平部を12´と表示しているが、原出願発明では右と同一の装置を備えるものの特に表示記号を付していない。)が穀稈の穂先に接触しながら、穂先の押圧力により右の軸を中心として回動し、その結果穀稈身の方向に移動するものであることが認められる。

(二) しかるに、当事者間に争いのない両発明の特許請求の範囲によれば、感知装置の動作と穀稈との関係について、本願発明では、同装置の「作用部分は脱穀装置に搬送される穀稈との接触位置において、その穀稈の穀稈身の方向線に沿つて移動調節可能に構成した」ものであるのに対し、原出願発明では、同装置が「搬送装置により搬送される穀稈の搬送路に穀稈と接触して追従回動するように設ける」構成を採るものである。

(三) このように、両発明の感知装置の設置目的、動作、効果に差異はないのにかかわらず、本願発明では右動作を「穀稈身の方向に沿つて移動調節可能」であると構成し、原出願発明ではこれを「穀稈と接触して追従回動する。」と構成したものということができる。そうであれば、両発明の右構成上の差は、感知装置の同じ動作を穀稈身の方向からみたか、軸を中心としてみたかの差であり、表現上のものにすぎないものということができる。そして、もとより本願発明が「移動」という構成を採択したことにより、原出願発明に比し格別の効果を奏したものと認めるに足りる証拠はないのであるから、両者の相違点(1)の構成は実質的に同一であるというべきである。

(四) 原告は、両発明が同一であるというためには、原出願発明の要旨も本願発明同様「感知装置が移動する」と認定されることが必要であると主張する。

しかし、前記のとおり、両発明における「回動」も「移動」も同じ動作を指すものと解すべきであるから、右主張は理由がない。

2 相違点(2)に対する判断について

前記争いのない事実によれば、本願発明と原出願発明は感知装置を手動により調節可能にした点では一致するが、後者が右調節の具体的手段としてレバーを採用し、右レバーをコンバインの運転席(操縦席)より届く位置に取付けた構成であるのに対し、前者がかかる構成を欠く点において相違するものということができる。

しかし、原出願発明における右相違点の構成が慣用技術であることは当事者間に争いがなく、前記のように本願発明の実施例は原出願発明のそれと同一であり、右実施例を示す図面(前記甲第二号証の三)には手動レバーは操縦席から操作できる位置に記載されている。したがつて、原出願発明の相違点(2)の構成は、コンバインに感知装置を設置するに際し、当業者として適宜採用し得る手段であり、本願発明もその実施に当り右手段を採用することを予定しているということができる。

そうであれば、本願発明において右の相違点(2)の構成は特許請求の範囲に記載されていないが、技術思想としての本願発明と原出願発明の各構成がこの点において実質上相違しているものと認めることはできない。したがつて、両発明の目的、効果もこの点において相違するとは認められず、これに反する原告の主張は採用できない。

3 したがつて、本願発明と原出願発明とは実質的に同一であるということができる。

三 このように、本願発明と原出願発明が同一であると認められる以上、本願は適法な分割出願とはいえないから、その出願日は、原出願日である昭和四七年八月二九日まで遡及する理由はなく、現実に出願がなされた昭和五三年九月四日ということになる。

しかして、本願発明がその出願前国内において頒布された刊行物である特開昭四九―四一一一三号公報(原出願の公開公報)に記載された発明と同一であることは当事者間に争いがないから、本願発明は特許法二九条一項三号により特許を受けることができないものというべきである。

四 以上のとおり原告の主張する取消事由は理由がなく、審決の判断に誤りはない。

よつて、原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註その一〕 本件における特許請求の範囲は左のとおりである。

「刈取装置と、脱穀装置と、刈取つた穀稈を脱穀装置に搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される穀稈の長短を感知装置により検出して穀稈の扱ぎ深さを自動調節する装置とを有するコンバインにおいて、前記扱深自動調節装置用の感知装置は、手動により調節可能であり、かつ、その作用部分は、前記脱穀装置に搬送される穀稈との接触位置において、その穀稈の穀稈身の方向線に沿つて移動調節可能に構成したコンバインにおける扱深調節装置の感知装置。」(別紙図面参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面

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